第5話「諏訪のお酒”神渡”蔵開き」

諏訪めぐり
第5話「諏訪のお酒”神渡”蔵開き」

冬の諏訪を訪れたある日、茅野にある豊島屋酒造の「神渡(みわたり)」の蔵開きに立ち寄りました。朝の冷たい空気の中、歴史ある酒蔵の木戸をくぐると、ふわりと漂ってくる米麹と発酵の香り。酒が“生きている”という感覚が、鼻先からじんわり伝わってきました。

試飲でいただいた搾りたての「神渡」は、キリッとした飲み口の中に、どこかやわらかい温かさがあって、思わず「美味しい…」と口に出してしまうほど。寒さでこわばっていた体が、内側からゆるんでいくようでした。地元の方々もたくさん来ていて、「今年の出来はいいよ」と話しかけてくれる笑顔が、旅人の私にはとても嬉しかった。

小さなおつまみを片手に、酒蔵の中を自由に歩きながら、その土地の歴史や人の想いを味わう。そんな贅沢な時間が、この蔵開きにはありました。ただお酒を飲むだけじゃない、諏訪という土地を“体で知る”体験。冬の旅で、この場所に出会えたことは、きっと忘れられない思い出になると思います。

立ち寄り所

豊島屋「神渡」

長野県茅野市に蔵を構える「株式会社 豊島屋」は、創業慶応元年(1865年)、150年以上の歴史を誇る老舗酒蔵です。八ヶ岳山麓の清らかな湧水と、諏訪の厳しい寒さが育てる酒は、どこか凛としていながらも、やさしく体に染みわたる味わい。「神渡(みわたり)」はその代表銘柄で、諏訪湖に現れる氷の道“御神渡り”から名づけられたもの。自然と人とのつながりを大切にしながら、一本一本、丁寧に仕込まれています。

伝統を守りつつも、新しい挑戦も忘れない豊島屋の酒づくり。地元に根ざし、地域の祭りや文化とともに歩んできた酒蔵の佇まいは、まさに信州の心そのものです。蔵開きや見学会なども行われており、旅の途中に立ち寄れば、酒だけでなく人の温かさにも触れることができます。

風土と歴史が詰まった一杯を味わうなら、ぜひ「神渡」を。諏訪の冬の物語を、ぜひその喉元で感じてみてください。

住所〒394-0028 長野県岡谷市本町3丁目9−1
TEL0266-23-1123
営業時間8時30分~12時00分, 13時00分~17時30分
定休日土日